■シチズンシップ教育推進プロジェクト | |
◆◆シチズンシップ教育の概説◆◆ ■シチズンシップ教育とは ■シチズンシップ教育の目的と実践課題 ■イギリスにおけるシチズンシップ教育導入の背景 ◆◆シチズンシップ教育推進プロジェクトの活動◆◆ ■プロジェクト概要 ■シチズンシップ教育推進活動4つの柱 ■リンク・参考サイト |
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■シチズンシップ教育とは | |
「シチズンシップ教育(Citizehship Education)」は、「市民性教育」という訳語で呼ばれています。 では、「市民性」とは何なのでしょうか。 まず、似たような言葉、「社会性」という言葉について考えてみましょう。「あいつは挨拶ができない」だとか、「きちんと連絡をよこさない」だとか、そういうときに「社会性がない」なんて言われますよね。でも、選挙に行かなかったからといって「社会性がない」と怒られることもありません。ゴミのポイ捨ては怒られるけれど、多少の分別をしないで捨てたからといって、「社会性がない」とも言われません。 もっと言えば、カベの落書きをしたら、怒られます。でも、カベの落書きを見て、「このカベの落書きをけしてあげよう」と行動に起こしたからといって、「社会性がある」というわけでもない。放置ゴミを拾って、街をきれいにする行為を見ても、「社会性がある」とは言いませんね。 ・・・。そうです。私たちはみんなのために良かれと思ってやっても、公共のために何かをしても、「社会性がある」とは言わないのですね。 こんなときに「市民性」という言葉を使うのだと思います。 そういえば、「スポーツマンシップ」「リーダーシップ」「フレンドシップ」・・・ 「〜シップ」という語尾がつくと、「意識」「権利」「気質」・・・などを表します。このように考えていくと、「市民意識」「市民権」「市民性」・・・といったニュアンスが見えてくるのではないでしょうか。 このようなシチズンシップを育む教育が、「シチズンシップ教育」なのです。 最後に、「リーダーズ英和辞典」より、「citizenship」の訳語を引用しておきます。 citizen・ship _n.1 市民権; 公民権; 公民の身分[資格](cf. →CITIZEN); 《大学などの》 共同社会の一員であること. 2 《個人の》 市民性, 市民的行動; 共同社会性 |
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■シチズンシップ教育の目的と実践課題 | |
○シチズンシップ教育の目的 「子どもたちが、参加型民主主義を理解・実践するために必要な知識・スキル・価値観を身につけ、行動的な市民となること」 ○実践課題3つのキーワード 「コミュニティとの関わり」の育成 「社会的・倫理的責任」の育成 「ポリティカル・リテラシー」の育成 出典:『学校における,シチズンシップと民主主義教育のための教育:
シチズンシップについての諮問委員会最終答申』(1998年9月) ■「コミュニティとの関わり」 「コミュニティとの関わり」の項目の中では、ボランティア活動に関する記述が多いのですが、他の箇所でも、「地域でのボランティア活動は市民社会の基礎」「健康な社会は,将来に関心をもつ人々で構成されている。共通善のために,社会の発展に喜んで寄与する人々であり、『私は何ができるか』と問う人びとである」といったことが書かれています。 しかし、ボランティア活動を権力が強制するのは、おかしいとは思いませんか。民主主義社会は、市民の自発性(ボランタリズム)の上に成り立つという原則に反します。 ■「社会的・倫理的責任」 そうすると、市民は何によって、ボランティアをしようと思うのでしょうか。 やはり、市民一人一人の内面に「社会的・倫理的な責任感」がなければ、ボランティア活動をしよう、なんて考えませんね。 ただし、なんとなく、「民主主義の優等生」を育てようという説教臭さを感じるかもしれません。 ところが、他の考え方もあります。一つには、「古き良き」市民道徳や倫理を地域におけるボランティア活動を通して復活させようという考えです。 もう一つは、財政難などによって、福祉国家が後退していく中、市民が自己責任で、ボランティア活動などによって行政の諸施策をカバーしようという考え方です。 ■「ポリティカル・リテラシー」 倫理や責任感、ボランティア活動などが強調され、おカミ(政府)にコントロールされ、従順な民衆となるのは、恐ろしい感じもしませんか。あくまで主体は市民であり、市民こそが国や社会を方向づけていきたい。 そこで、自らと社会の関係を批判的にとらえて、適切な行動を選び取っていく力が必要になります。これが、「ポリティカル・リテラシー」です。 |
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■イギリスにおけるシチズンシップ教育導入の背景 | |
シチズンシップ教育(citizenship education)は、めまぐるしく変化し続ける現代社会にあって、子どもたちが将来、市民としての十分な役割を果たし得るよう、知識、態度、スキルを体得させるための教育として、近年、欧米諸国で関心を集めている。とりわけ80年代以降、深刻な不況によって若年失業者が増加し、将来への展望を失った若者たちの暴力、社会的無関心が重大な問題として認識されるようになると3)、将来を担う世代に、社会的責任、法の遵守、地域やより広い社会と関わることの重要性を教えなくては、民主主義社会の将来はない、との危機感が広がったことも背景にある。 こうした背景から、イギリスでもシチズンシップ教育の必要性が80年代終盤から議論されるようになった。とりわけ興味深いのは,この議論が,最も保守的だと言われる内務省とその周辺から最初に始まったことである。犯罪率の増加、高齢化、そして福祉国家の後退など、困難な問題に数多く直面していた当時の保守党政権が、問題解決のための新たな施策を教育の領域でも立案せざるをえなくなった事情がうかがわれよう。ただし、保守党政権の時代には、シチズンシップ教育は単独の科目としては位置づけられず、科目にまたがって教えるべき「領域」とされるにとどまった。そのため主要科目と基礎基本の指導を重視する学校現場では、ほとんど省みられることはなかった。そこで、1997年に労働党政権が成立すると、文部大臣となったブランケットはシチズンシップ教育の必要性と方向性を明確にするための諮問委員会を組織した。 委員長に迎えられたB.クリックは、1970年代に「政治教育プログラム」を主導したことでも知られる人物である。その他、前内務省大臣,国会議員、学識者、シンクタンク、英国国教会,ボランティア団体の代表等が委員に名を連ねた。 『ボランティア活動・奉仕活動を検討する視点 イギリスにおけるシチズンシップ教育導入に関する議論から学ぶ』 阿久澤麻理子著 http://www.hept.himeji-tech.ac.jp/~akuzawa/topics.html より引用 |
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